スーパーなどで売られている栗の甘露煮。
国産のものと、韓国産のもの、一見おなじように見えるのに、値段が大きく違うことも。
今回は国産栗の価格が高い背景をご紹介します。
栗は年間平均気温が10~14℃、最低気温が氷点下20℃以上あれば栽培できるので、沖縄を除くほぼすべての都道府県で見ることができます。栗は放任栽培でもよく育ち、遊休農地の活用のため、副業的に栗を植えている農家も多いです。だったら産地も生産量も多いと思われるかもしれませんが、栗は収穫作業が難しく、採算のとりにくい作物のひとつです。
実はその「栗拾い」に難しさがあります。栗は種子です。そのため発芽しやすいよう、好天が続き、ひとあめ降ったタイミングで一斉に落果します。この収穫のピークに人手を確保しなければならないのですが、高齢化の進む農家ではそれが難しくなっています。また落果の前に周辺の木を下刈りする必要もあり、せっかく栗の木が植えられていても、放置…ということが日本中で起こっています。
また後述の、栗の剥き作業が韓国に移るのと合わせて、日本の栗の苗木が韓国に移植されるようになりました。現在、日本品種の韓国栗は日本の約3倍作られています。安価な韓国栗の輸入量増大に伴い、国産の栗の採算は悪化し、生産量の減少に拍車をかけています。
日本の栗は固い鬼皮と剥皮しにくい渋皮に包まれています。ご存知の通り、栗の鬼皮と渋皮を剥くのは大変な作業です。古くから栗の産地には栗の剥き手がいましたが、過酷な作業のため、手にケガをしたり腱鞘炎になったり、と昭和40年ごろより国内の剥き手の数は急速に減少しています。
それに伴い、栗甘露煮用の剥き作業は韓国で行われるようになりました。国内で収穫された栗を韓国へ輸送し、剥き作業を行ったあと、再び日本に輸送します。そのため、コンテナでの輸送費や現地での人件費といったコストが増大。現在は韓国の近代化に伴い、この作業は国内産、韓国産ともにほとんど中国で行われています。
当社では日本で剥き加工したものを中心に、中国で剥き加工したものも併用して使用販売しています。最終加工地はすべて日本です。
国産の栗は茨城産と熊本産で収穫量の半分近くを占めています。茨城は昔から剥き栗で出荷する文化があることや東京に近いことから栗づくりが盛んでした。熊本は良質の栗がとれる気候風土でほかの産地より高値で売れるため栗農家が多く残っています。(※1)
大量にとれる産地が限られると、産地の分母が少ない為、台風等や天候不順による凶作の際には一気に価格が上昇する傾向にあります。特に栗は前述のように、一気に生育、落果する性質があるため、台風の被害を非常に受けやすい作物です。
※1:最近では需要の多い長野、岐阜などで栗の生産を始めたり、栗林を広くしたりする農家が増えてきています。これはこの地方では小布施・中津川などといった栗菓子で有名な消費地があり、最近の産地表示の問題から地元で高値で販売できるようになったためです。逆にいえば、これらの地方でもまだまだ需要をまかなえず地元以外の栗を大量に使っている、ということです。
以上の理由から、国産の栗の価格は上昇傾向にあります。前述の剥き作業も、中国の人件費が上昇しているため、次の取り組みをしなければならない時期にきています。
おいしい国産の栗をお求めやすい価格で提供できるよう、当社はこれからも取り組んでまいります。